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唇を重ねたまま、振り上げられている手を掴む。
そして、割って入るように指と指を絡めると、ガラスに押し付けた。
何度か角度を変えて口付ける内に、森本の身体からだんだんと力が抜けるのが分かった。
展望フロアに到着することを知らせるアナウンスが聞こえ、そっと唇を離す。
目を閉じてキスの余韻に浸る森本の口元が薄く開いている。
今までに見たことがない彼女の艶っぽい表情に我を忘れそうになるのを必死で堪えた。
「……その顔、反則。」
思わず呟くと、我に返った森本が真っ赤な顔をして俯いた。
エレベーターの扉が開き、一組のカップルが乗り込んでくる。
上りのエレベーターに乗ってきた俺達が降りないので怪訝な顔をする。
エレベーターが下降を始めると、森本と目が合い声は出さずに苦笑する。
絡めたままの指の温度が心地良くて、この状況を錯覚しそうになる。
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