第9章

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外は昼間に比べ、幾分過ごしやすくなっていた。 時折、風が吹いて街路樹をザワザワと揺らす。 浴衣姿の女が、展望台前の広場で楽しげに話し込んでいる。 「私も浴衣着たかったなぁ。」 「俺も浴衣姿見たかったなぁ。」 森本がボソッと呟いた一言におどけて返すと、ふっと吹き出す。 「浴衣姿見て、何か楽しいの?」 「んー?普段と違う姿にそそられる。」 「またそんなこと言う……。」 「はだけた胸元とか、裾から覗く生足―――。」 最後まで言い切る前に、また二の腕を殴られた。 「……突っ込んで聞くから、正直に答えただけだ。」 「……。」 「……これで、機会は潰えたな。」 つまらない冗談を言ったが、森本の浴衣姿を見たいのは本心だ。 欲を言えば、そんな彼女を連れて歩きたい。 ……今、この時間のように。 黙り込んだ森本が足を止める。 依然、森本と繋がれたままの手が引っ張られ、その反動で振り返った。 .
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