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俺と森本の身体が密着し、布越しに彼女の柔らかな胸の膨らみを感じる。
そして、その奥で脈打つ心臓の音は異常なまでに大きくて早い。
何も言わず、ただ胸元に顔を埋める森本。
込み上げる喜びを否定するかのように、もう一人の自分が嘲笑う。
彼女は、場の空気に飲まれ、俺に同情しているだけだ、と……。
森本の温もりを感じながら、勘違いするな、と自分自身を説き伏せる。
彼女の手は、俺の背中を往復しながらゆっくり動く。
子供をあやすかのようなその行為は、俺の考えを肯定しているようなものだ。
「虎太朗君。」
長い沈黙の後、口火を切ったのは森本だった。
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