第9章

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「私、自分の気持ちがわからない。 ……今、虎太朗君を抱き締めたい、って思った。」 「……。」 「虎太朗君は、こんなに強引なのに、そばに居ると安心するの。 ……そんなの、おかしいよね?」 森本の言葉に、心にほんのりと明かりが灯る。 「おかしくなんかないよ。」 彼女が俺に抱いている感情は、決して同情ではなかった。 俺と居る時間を心地好く感じている。 そのことが、俺の気持ちを軽くし、独りよがりではない抱擁は、俺にまで安心感を与えてくれた。 離れがたくて、長い間森本を腕の中に閉じ込める。 彼女もまた、身体を離そうとはしない。 一緒に居ると安心する、と言う割りに、どれだけ時間が経っても、落ち着きをみせない彼女の心臓の音に微笑んだ。 森本と俺の境界線が薄れ始めている。 ゆっくりではあるが、森本が俺を受け入れ始めていることに喜びを隠せなかった。 .
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