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「私、自分の気持ちがわからない。
……今、虎太朗君を抱き締めたい、って思った。」
「……。」
「虎太朗君は、こんなに強引なのに、そばに居ると安心するの。
……そんなの、おかしいよね?」
森本の言葉に、心にほんのりと明かりが灯る。
「おかしくなんかないよ。」
彼女が俺に抱いている感情は、決して同情ではなかった。
俺と居る時間を心地好く感じている。
そのことが、俺の気持ちを軽くし、独りよがりではない抱擁は、俺にまで安心感を与えてくれた。
離れがたくて、長い間森本を腕の中に閉じ込める。
彼女もまた、身体を離そうとはしない。
一緒に居ると安心する、と言う割りに、どれだけ時間が経っても、落ち着きをみせない彼女の心臓の音に微笑んだ。
森本と俺の境界線が薄れ始めている。
ゆっくりではあるが、森本が俺を受け入れ始めていることに喜びを隠せなかった。
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