第4章

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「……お、お待たせしました。」 稽古着に着替え終わった森本が、そっと中から扉を開ける。 「どーも。」 俺は鍵を手に、部屋の中へと入り、部屋の隅に鞄を置く。 不可抗力とは言え、一応謝っておくか。 「さっきは済まない。悪気はなかった。」 森本は、真っ赤な顔をして俯き、消え入りそうな声を出した。 「あの、私も、内側から鍵を掛けたつもりだったんだけど……。」 「あぁ、鍵は掛かってた。」 「へっ?!」 俺は、握っていた鍵を森本の前にぶら下げて見せる。 「下駄箱に置きっぱなし。」 俺達は、同時に吹き出した。 「森本さんって、天然だよね。」 「ち、違います!佐伯さんが、たまたま……。」 「虎太朗、でいいよ。皆、そう呼んでるし。」 森本は、呼び捨てなんて…と、戸惑っていたが、少し照れた表情で、俺の目を真っ直ぐ見つめた。 「じゃあ、……虎太朗、君。」 ……何だ?この感覚。 初めて、下の名前を呼ばれたからか。 それとも、真っ直ぐに俺を見つめる照れた表情からか。 顔が一気に熱を帯びていく。 それを悟られまいと、咄嗟に口元に手を当てた。 .
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