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 まず、周りとの格が違った。 それもそのはず、先述した通り、彼は、音楽に対して興味がなく、今まで何もやってこなかった。  それに対し、周囲の殆どは音楽に対し何らか興味があり、今まで何かしらの経験を積んでいた。 彼は、初めから置いてきぼりをくらったようなものだった。  そうした初めの距離を穴埋めするためには努力というものが必要になる訳だが、(これが第二の理由になるわけだが)彼は努力の仕方というものを全く知らなかった。 それもその筈である。 彼は今まで、生まれ持っての才覚だけで、生きてきたのだから。 彼は、勉強することはあっても、本当の困難に対しての、苦しい経験というものがまるで無かった。  そうして、彼はいきなり現れた巨大な壁に立ち往生することになる。
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