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 ―それがいけなかったのかもしれない。彼は天性の才能だけで持て囃され、大事にされたことが、甘ったれで、偏執的で、自尊心が無駄に強い彼を生み出した。 彼は、自分を天才だか何だか、超人的な存在と思い込んでいた。  また、彼は、自分の容姿に絶対的な自信を持っており、それを磨くことに余念が無かった。 彼の「見かけを良くすること」は、それだけに留まらず、仕草まで、まるで一流の英国紳士のような気品と優雅さ、礼節の正しさを持ち合わせるまで、独学で磨き上げた。  それは、こうした方が、女性からのウケが良く、(良い意味でも悪い意味でも)周りの注目を集める事が出来るからだ。 彼は、恋情・嫉妬・憧憬・羨望、その他もろもろが含まれる周囲の視線を一身に受け、そうした目の中を闊歩することが大好きであった。
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