思い出。プロローグ

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「なぁ、洸(こう)。俺たち、あと何日で卒業だか分かるか?」 2月半ば、天気は雨。いつもの教室のいつもと変わらない雰囲気の中、同じクラスの英雄(ひでお)が僕に聞いた。 『しらない。俺が数えてるわけないだろ?』 卒業までのカウントダウンが教室の後ろに書いてあるのは知っている。 「今日入れて20日だ。来月半ばには俺達は卒業。」 知っているなら聞くなよ。 そう思ったけど、あえて言わなかった。 「中学、短かったな。俺、何もできてない気がする。エイユウなんて名前負けしすぎだろ。」 卒業前の生徒がよく言いそうなことをいって、窓の方を見る。 (お前、ヒデオじゃん……。) そんなこと思いながらもいっしょになって見てみると窓際の席で集まる女子の中に英雄が好きな女子が楽しそうに笑ってた。 『お前、この際あいつに告れば?』 最後の思い出作りというか、イベントみたいなノリで僕は提案した。 『ほら、お前が言った通り俺らもうすぐ卒業じゃん?中学卒業しても楽しくいられるように、彼女でもさ、つくってみないか。俺も協力するから。』 告る勇気のない英雄に協力する。だが、七割くらいは自分の残り20日に意味を持たせる為に言った。 「え?マジで?洸が協力してくれるならやろうかな。洸ってそういうの考えるの得意だしな。」 『……』 読者に誤解されないように言っておくが、そんな特技は無い。
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