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「うわぁっ」
私は驚いてベンチから落ちそうになった。
亜季が笑う。
「じゃあ行こっか。」
私と亜季は高校時代からの友達で今年で10年目の付き合いになる。高校の入学式当日、あろうことか私は寝坊をして慌てて家を飛び出した。時計は9時を指しており、もう遅刻は決定だった。走っていると同じ制服を着て私と同じように走っている女子がいた。
「陽高ですか?」
亜季はにこっと笑い私に近づいてくると、そう問いかけた。陽高というのは私がこれから3年間通うであろう陽川(はるかわ)高校の略である。
「うん。」
人見知りをしてしまう私は、緊張してそれしか言えなかった。
「初日から遅刻なんて先生からの視線が怖いよね。でも、あなたがいて良かった。走ろう!」
亜季は、そう言うと私の手首を掴んで走り出した。後ろを振り返った亜季と目が合って二人して笑った。まだ、お互いの名も知らないのに、なんだか亜季とは仲良くなれる気がした。こうして、私と亜季は出会ったのだ。
いつもと同じカフェに入る。お客さんはほとんどいなくて店内はガラガラだ。私と亜季は、まるでそこが自分の場所かのように決まっていつもと同じ窓際の席に座る。いつもと同じ店員さんが注文を聞く。いつもと同じ、コーヒーがカップに注がれる音がする。
そう、ここまではいつもと同じだったのだ。
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