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「失礼したな二年生。私の名前は――」
「いえ、仰らなくて結構です」
名前を知る事は、関わりを持つ第一歩。友達が百人どころか千人は出来るんじゃないかって位、コミュ力の高そうな彼女となんて、僕は関わるべきじゃない。
それに、初対面で悪いが、この人は空気が読めなさそうな人だと思う。無駄に明るい人は苦手だ。
「ふうむ……一方的に名前を知っていると言うのも、いいモンではないのだけどなあ……」
「だからと言って、別に僕に構ってくれなくたって……ん?」
今、引っかかる言葉が出たぞ。
「名前を……知っている?」
「君、一年三組二十八番――じゃなくて、これからは二年七組三十二番か。間御宮芥だろ?」
…………絶句。
いや、名前までなら百歩譲って良しとしよう。でも、組と番号――しかも今年度のやつまで。
だって、今日が始業式だったんだぞ。今日、初めて公開された情報を、しかも初対面の僕のものを。それだけじゃない。彼女の中で、僕の顔と名前は完全に一致している。
「……何か僕に、用ですか?」
この僕に話しかけてくるなんて、相当な用事じゃなければ有り得ない事だ。それが生徒にしろ、先生にしろ。
但し、不吊先生は除く。
「いやいや、用だなんて、そんな大層なものじゃないさ」
けらけらと朗らかに彼女は笑う。
「私は部活の勧誘をしているんだよ」
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