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「そんな事はない。癖で嘘を吐く人がいれば、他人を蔑む人もいる。無意識に他人を傷つける人もいれば、殺人が出来る人もいる。この世の中、どんな癖もあるさ」
「はあ……」
「例えば空を飛んでしまう癖とか、深海を泳いでしまう癖とかな」
「先生、それは癖どうこうの前に、人じゃありません」
「もし居たらどうするんだ? お前の言い分だと、その人達は、最早人でないと言うなんとも失礼な事になるぞ? うわっ、失礼な奴だなー、お前」
「そう言う先生の方が失礼ですよ」
「いやいや、馬鹿と言う方が馬鹿であるように、失礼と言う方が失礼なんだよ。分かったか、この失礼少年が」
「………………」
阿呆らしくなってきた。
なんか、不吊先生と喋ると知能が低くなる様な気がする。
……じゃなくて、僕らが知能が低い話をしているだけか。
僕は再び本を手に取り、読書に逃げる事にした。先程、栞を挟んだ所を開いて続きを読む。
静寂に包み込まれた。
不吊先生も本を読み出したらしく、ページを捲る音が耳に入った。静かなので、その音が良く響く。
周りには人っ子一人いない。当たり前だ。今日は、この七夕(たなばた)学園の始業式なのだから。僕を除いた高等部の全学年は、今頃、第三ホールでつまらない理事長のお話を聞いてる筈だ。
それを、ここ――七夕学園高等部にある図書室で、私めはサボタージュしている訳であります。はい。
いや、僕は登校して来た時から、始業式に出るつもりなど無かったのだ。クラスと担任を確認し、教科書や手紙を貰う為だけに来た。始業式なんて出ても理事長の話を聞くだけで終了。その時間、読書をしてる方が有意義であろう。
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