第一章

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「…崎田さん、聞いてる?」 「…」 「崎田さん。」 「あ…え?何?」 「今ので分かった?」 「え?何が?」 「解き方。」 あ…。立川君に見とれてて、全く聞いてなかった…。 なんて、言えないから。 「あ、うん。分かった!ありがとうございました。」 「…聞いてたなら良いけど。俺が教えた問題で点失わないでね?」 「え」 「正直に言えばもう一度教えるよ」 「すいません…。聞いてませんでした」 そう言葉を放った瞬間。 立川君は笑って、 「すぐ認めすぎじゃない?」 と言った。 無邪気な笑顔で。 こんな顔もするんだ。 急に私の胸がズキッと痛んだ。 「……?」 なんだろう、この感覚。 「崎田さん?大丈夫?」 「あ…。うん。ごめん」 「保健室、行く?」 「ほんと何でもないよ。続き教えて?」 そして、また解説をしてくれようとした時、私の腕を温かく包む手が現れた。 「ほっといたらダメだろ。連れてく」 「大樹。ほんとに大丈夫だよ」 でも、大樹は私の言葉に耳を傾けてくれなかった。早歩きで保健室に向かっている。 「大樹?」 「…」 「機嫌悪いの?どうして?」 「別に普通」 「そう」 そんな他愛もない話をして、保健室に着いた。 「でも大樹。これからテストなのに。受けなきゃダメだよ。」 「今日ムリして明日学校来れなくなったらどうするんだよ。」 「そうだけど…本当に何でもないんだって」 すると、大樹は私の頭をポンポンと叩き、 「休んどけってば」 と言った。 大樹は本当に優しい。 中学の時からそうだった。いつだって私の心配をしてくれる。 「うん…じゃあお言葉に甘えて」 お言葉に甘えてテストサボります…。 「じゃぁソイのこと先生に言っとくから」 「うん」 「じゃ、俺戻るね」 「うん。ありがとう」 大樹は手を振りながら、保健室を出ていった。 .
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