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「…崎田さん、聞いてる?」
「…」
「崎田さん。」
「あ…え?何?」
「今ので分かった?」
「え?何が?」
「解き方。」
あ…。立川君に見とれてて、全く聞いてなかった…。
なんて、言えないから。
「あ、うん。分かった!ありがとうございました。」
「…聞いてたなら良いけど。俺が教えた問題で点失わないでね?」
「え」
「正直に言えばもう一度教えるよ」
「すいません…。聞いてませんでした」
そう言葉を放った瞬間。
立川君は笑って、
「すぐ認めすぎじゃない?」
と言った。
無邪気な笑顔で。
こんな顔もするんだ。
急に私の胸がズキッと痛んだ。
「……?」
なんだろう、この感覚。
「崎田さん?大丈夫?」
「あ…。うん。ごめん」
「保健室、行く?」
「ほんと何でもないよ。続き教えて?」
そして、また解説をしてくれようとした時、私の腕を温かく包む手が現れた。
「ほっといたらダメだろ。連れてく」
「大樹。ほんとに大丈夫だよ」
でも、大樹は私の言葉に耳を傾けてくれなかった。早歩きで保健室に向かっている。
「大樹?」
「…」
「機嫌悪いの?どうして?」
「別に普通」
「そう」
そんな他愛もない話をして、保健室に着いた。
「でも大樹。これからテストなのに。受けなきゃダメだよ。」
「今日ムリして明日学校来れなくなったらどうするんだよ。」
「そうだけど…本当に何でもないんだって」
すると、大樹は私の頭をポンポンと叩き、
「休んどけってば」
と言った。
大樹は本当に優しい。
中学の時からそうだった。いつだって私の心配をしてくれる。
「うん…じゃあお言葉に甘えて」
お言葉に甘えてテストサボります…。
「じゃぁソイのこと先生に言っとくから」
「うん」
「じゃ、俺戻るね」
「うん。ありがとう」
大樹は手を振りながら、保健室を出ていった。
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