セカンドバージン

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「はい、はい……あ、じゃあ後ほどデータ送信しますので。はい。…お疲れ様です」 高そうな腕時計を嵌めた手で携帯電話を持ち、ホテルのロビーで電話する主任を私はボーッと眺めていた。 出張なんてした事ないのに、何故かあまり関わりの無い秋山主任に同行する事になった今回の大阪出張。 メインの商談は秋山主任のお陰で非常に上手く行き、当然私の出る幕など無かった。 補佐なら直属の部下の木下さんで良かったはずなのに、どうして私に指令が下ったのだろうか。 出張にさえ来なければ、こんな思いをする事も無かったのに。 そこで、通話を終えた主任と目が合い、私は視線を自分の腕時計へと落とした。 時刻は20時を回ったところだ。 「本日は全て終了で宜しかったでしょうか」 「あぁ、お疲れ様。今回は急な出張で申し訳なかったね。助かったよ、ありがとう」 特別何もせずに着いて歩いていただけの私に、労いの言葉を忘れずくれる主任はさすがデキル上司だと思う。 だけど……。
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