セカンドバージン

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嘘をついて出て来た以上は一応何か買って帰らねばマズイと思い、ホテルの前の薬局で、常備薬として持ち歩いている胃薬を一箱買った。 だけど、それだけで戻っては主任に会ってしまう可能性がある。 仕方無しに、私はその並びにある喫茶店に入った。 食欲など到底無いが、何か口にしなければまた胃が痛くなってしまう。 私は店で1番小さなショートケーキとミルクティーを頼んだ。 夕べはさすがに飲み過ぎたし、昔から何か嫌な事があるとすぐに胃が痛くなるので、そうなる前に薬を飲むのが習慣と化していた。 また今日からしばらくは胃薬の厄介になるだろうと思うと、重いため息が零れる。 何でこんな事になってしまったのだろうか。 想いが通じなくても、私は見ているだけで幸せだったのに。 一足飛びにお酒の勢いだけでやってしまうからこうなったのだ。 大学以降彼氏はなく、男性と体を重ねる事が苦手だと思っていたわたしは、もうこのままお見合い結婚でもして、それまで誰とも交わらないという意味のセカンドバージンを決め込もうと思っていたのに。 やはり、身の丈に合わない片思いと行動はするものではなかったと、後悔ばかりが押し寄せる。 それでも主任を嫌いになれない自分は、きっと世界で1番バカなのかもしれない。
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