人間とアルルーナ

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暗闇の中 何もない暗闇の中に、隼人は立っていた。 その場で回って辺りを確認する。 しかし何も見当たらない。 「何だ、ここは?」 そして自分の発言に違和感を覚える。 しかし、長考する時間は与えられはしなかった。 「こっちに来給え」 後ろから、確かに聞こえる声。 隼人は警戒し、しかし声に、何かの元に歩きだす。 そして、足を止める。 「来たか……」 その声は確かめるように呟いた。 隼人は突然、浮遊感に襲われた。 そして自分が発光している事に気付く。 それは、その光はとてつもなく薄く、弱々しかった。 やがて、その光は足から薄れ始めていく。 そこに映るは闇。漆黒。 考える間も与えず、声が響く。 「間もなく、現世(うっしょ)のお前は消える。お前は誰からも忘れ去られ、お前の生きていた証も、お前の宝も、意思も、親兄弟同級生親友も、お前に向けた毀誉褒貶(きよほうへん)も、全て消える。そして、旅立つのだ。さらばだ、人間だったお前よ」 声は告げた。 突然過ぎて隼人は半分も理解できなかったが、これだけは理解できた。できてしまった。 ――自分は、消える。 それを肯定するかの様に、光は霧散し、身体は消える。 既に首から下はない。 「待てよ、どういうことだよ!俺が消えるって、一体どういう 隼人の声は途切れ、最後の光も、霧散した。
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