メシア生誕

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「何だと!?」 「今年産まれる赤子の中に、それが居ると言うのか!?」 神官は目の前の王が、常々行っている民への暴虐ぶりを我が身に発揮せぬ事を祈りつつ更に言葉を続けた。 「王よ…ヘロデ王よ。これは古より伝わりし預言の書に記されているもの…誰にも変えられませぬ」 王は一瞬、曇った表情を見せたが、次の刹那には歪んだ口元を更に歪ませ唸るように笑い出した。 「聞け!我はイスラエルの王ヘロデなるぞ!我に取って代わる者など未来永劫現れぬのだ!」 ソロモンの時代から伝わる神殿の大祭堂に、狂気の王の声が響き渡った。 「今年産まれてくる赤子は…」 「全て始末するのだ!」 そう言い放つと暴君は、再び高らかに笑った。 エルサレムから遠く離れたベッレヘムの町に夕闇が迫る頃、大工のヨセフは、普段余り見る事もない星空を見上げながらとぼとぼと家路を辿っていた。 「妙に星が騒がしいだなや?」 ハッとしたヨセフは、足取りを速くする事に決めた。 「産まれるだ!」  
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