3人が本棚に入れています
本棚に追加
ウルドの口元は薄く笑っていたが、その目は全く笑っていない。
「ミッドガルドに紛れているお調子者を捕らえて欲しいのだ。」
「ほほ…悪戯者はお嫌いではありませんでしたか?」
ウルドは黙ってスクルドの方に顔を向けた。
ウンディーネの感情の無い目は、何かを感じ取ったようだった。
「しもべの精霊を総動員しましょう。」
そう言うとウンディーネは、音もなく水面に同化した。
…これでよい。
さて、わたしは
わたしで動くとするか…
「スクルド?旅の支度を…」
「はい。え?あの…お姉さま?」
ウルドはそれには応えず歩き出した。
…グングニルでも借りに行くか?
パタパタとウルドの後を追うスクルドは、ただならぬ事だという雰囲気を感じ取っていた。
暗い通路にひとつの足音と、その足音の主が腰にぶら下げている鍵束がジャラジャラと揺れる音が響く。
小さめの斧を肩にかけたドワーフ…松明の灯りが、その異様な形相を照らし出す。
奇妙な紋章の付いた黒光りする金属の扉に、持っていた鍵束の中の鍵をひとつつまんで鍵穴に差し込む。
ギギギ…
分厚い不気味な扉がきしみながら開かれ、ドワーフの視界に広い空間が現れた。
最初のコメントを投稿しよう!