♯12 暗躍

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   人は、そんなに簡単に殺害できるものか。  無差別であったにせよ、人混みの中で短刀を手にした相手がいたなら。それが、自分に向けられているとしたら。  人は、間違いなく逃げる。  不意討ちのように刺すとしても、一撃で致命傷が与えられるとは限らない。加害者の中には、女性が何人もいたのだ。  だが、被害者も操られていたとしたら。  殺害の成功率は、かなり高くなってくるだろう。  実際のところ、事件の殺害成功率は十割。ただの一度も失敗せず、加害者も自殺してしまった。  途中から、凶器を拳銃に切り替えたのは、殺傷能力の高さからであり、より成功率を高めたかったのかもしれない。  最初から拳銃を使わなかったのには、また別の理由がありそうである。 「結局、首謀者側の目的は何なのかしらね」 「陸道釈放が目的だと思ってましたけど、その陸道を殺害しちゃいました。殺害が目的で、それを達成したから、なりを潜めたりなんかしませんよね」 「それは、無いでしょ」  歌津美は、その話しになってから考えていた。
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