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それでも、カヤの外なのだ。
多岐川 沙菜などという、捜査線上に登りもしない女を追っている。その時点で、お話しにもならないと、取り合う気にもならないようだ。
「だが事件の本筋は、案外こっちかもしれんのにな」
伊藤は、小さく笑った。
捜査本部は、多岐川 沙菜など捜査線上に登りもしないと思っている。だがそれは、自分達が取り上げないだけなのだ。
沙菜は、事件に関わっている可能性は否めない。
陸道教設立前の、睦目 陸道と関わりがあったという証言がある。
あの、葛西臨海公園の現場にいた。
それだけじゃ、状況証拠としても頼りないが、睦目 陸道と関係があって事件現場にいた事を、単なる偶然で片付けていいものか。
だが足踏みをしている捜査本部より、対策室の捜査の方が前進している。
「まぁ、前進たってヨチヨチ歩きだけどな……」
また、伊藤は呟く。
本部の誰もが、伊藤の事など気にも止めないのだから、それらの呟きなど聞いている筈もない。
伊藤も、そのつもりで呟いているのだ。
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