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「ごめんな。」
「次くる時はさ、」
「3年も、待たせないから。」
「すぐ、帰ってくるから。」
「だから、そんな顔すんなって。」
彼女は 気にしてないよ、と言いながら、
線香花火に目を落とした。
俺のと、彼女の。
ふたつの線香花火の玉が、同時に地面にポトリと落ちた。
「あのね、」
暫くふたりで玉の落ちた場所を見ていたら、
彼女が徐に話し始めた。
「私、ほんとに大丈夫だから。」
「メールして、電話して。」
「会えなくても、そんな些細な時間がいつも、楽しみでしょうがないから。」
「いつまででも、待っていられるよ。」
本当はそんなことない。
寂しくて仕方ないと
その瞳は語っているのに
迷惑を掛けまいと強がってみせる姿がいじらしくて、
俺は目の前にいる初恋の人を力いっぱい抱きしめた。
もう、離さないと。
悲しませないと。
自分自身の心に、誓った。
いつのまにか白みはじめた空は、雲ひとつない快晴だった。
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