帰郷

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「ねぇ」 彼女と同じように大木を見上げながらそんなことを考えていると、 不意に呼ばれた。 「ん?」 「あのね、今夜、うちの晩ご飯、カレーなの。」 「食べに来るでしょ?」 彼女は少しだけ微笑んで言った。 「ああ。」 「おばさんのカレーは絶品だからな。」 「こんなタイミング良く帰省して、食べない手はないだろ。」 2人で暫く、くすくすと笑いあった。 そう。 そうなんだ。 ただ、会って一言話すだけで。 会えなかった期間などなかったように 笑い合えるのに。 寂しさなんて消えて無くなるのに。 その分、別れの寂しさがまた 募って行くばかり。 どうすることもできず、ただ、空をゆったりと流れる 雲を目で追っていた。
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