0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ」
彼女と同じように大木を見上げながらそんなことを考えていると、
不意に呼ばれた。
「ん?」
「あのね、今夜、うちの晩ご飯、カレーなの。」
「食べに来るでしょ?」
彼女は少しだけ微笑んで言った。
「ああ。」
「おばさんのカレーは絶品だからな。」
「こんなタイミング良く帰省して、食べない手はないだろ。」
2人で暫く、くすくすと笑いあった。
そう。
そうなんだ。
ただ、会って一言話すだけで。
会えなかった期間などなかったように
笑い合えるのに。
寂しさなんて消えて無くなるのに。
その分、別れの寂しさがまた
募って行くばかり。
どうすることもできず、ただ、空をゆったりと流れる
雲を目で追っていた。
最初のコメントを投稿しよう!