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「おまえ、ほんとずるい。」
ぎゅっと俺の腕にしがみついて、震える小さな声で言った晃人。
ぶわっと、俺の胸の中に溢れるものを感じる。なんだろうなぁ、これ、この、幸せなやつ。
「ずるいのはどっちだよ」
「は…?」
「高校生に、こんな重たいこと言わせてんの、晃人だろ。ちゃんと、責任とれよ?」
そんなことを言って、照れ隠しに晃人の髪をぐしゃぐしゃっと撫でる。晃人と付き合うようになってから、柄にもないこと言い過ぎだよな。
「お前こそ、こんなおっさんをグズグズにしてる責任、とれよ」
ずずっと、鼻をすすりながら言った晃人に、思わず笑う。グズグズ、間違いないな。でも、晃人が普段あまり言わない、俺のことを縛る言葉に、どうしようもない嬉しさがこみ上げてくる。
「あー、もう。あんま不安にさせんなよ?」
晃人のことを、ぎゅーっと強く抱きしめて言う。本当は、不安で不安でいっぱいだった。だって、まさかあんな強敵現れるなんて思ってもみなかった。
「…うん、望…全部お前のもんだよ」
…あー、もう、無理。
「よし、やるか。」
「はっ!?このタイミングで!?」
「こんないいタイミングねえだろ。」
「いやいや!これはもうちょっと甘い空気に浸る時間だろ!?」
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