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「儂はサルの煮込みが食いとうなってきたわ」
己を見下す化け物は、無数の目を胴体に飾りつけておる。
最初は腰を抜かして笑われたもんじゃが、心根が屈強となった今となっては恐怖を感じぬ。
激痛と畏怖を堪能しつくして感覚が麻痺しおったか。
己は、己自身の身体を不思議に思いつつも、山に登っている鬼に叫んだ。
「己は丁度、鬼の串焼きをかぶりつきとうなったわ! 降りてこい!」
己の言葉を真に受けた鬼は度肝を抜かれたようにぽかんと口を開けた。
阿呆め、隙だらけじゃ。
足元に転がる死体の首を引きちぎり、鬼の口に投げ込む。
大昔登った蜘蛛の糸は、己に腕力と脚力と絶望をくれた。
もらったもんを無駄にせんのが盗人の信条だ。
己の投げつけた生首を呑んだ鬼は、喉を詰まらせたらしく地面に這いつくばり呻く。
形勢逆転。
ここからが己の腕を見せるところらしい。
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