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「やぁ、まさか君が訪ねて来るとは思わなかったよ。――――眠っているのではなかったのかい?」 シャルディアはゆるりと首を傾げ、目の前の人物に問い掛ける。アンティーク調の椅子に腰掛け、肘を付いて退屈そうに笑う。 「何の用だい? 君の事は存外、嫌いではないから、失望したくはないのだけれど。」 シャルディアの目の前に佇むそれは、ひたすらに沈黙を貫く。―――――ただ酷く寂しげな目をして白い彼を見つめている。物憂げな色を孕んだ美しい橙色の瞳が、シャルディアの紅玉とかち合った。 「……今更ね、神と友好的にするのは不可能だ。―――――先に手を振り払ったのは彼方だ。」 何故此方から歩み寄る必要があるんだい。と首を傾げた。うっすらと唇を歪め、嘲る様に言う。 橙色の瞳が責める様な色を映す。シャルディアはそれを見て、笑みを柔らかいものに変化させた。 「君は何時までも変わらないね。……それは私にとって喜ばしい事では有るけれど、もう、手遅れだ。……君にとっての愛し子達は、変わってしまったよ?」 神と呼ぶには余りにも愚かに成りすぎた。――――君の言葉ももう届かないかも知れないね。 橙色な瞳が哀しげに揺れる。それを見たシャルディアは溜息を吐く。 「……こうなる事は、理解できたのではないかな。」 君はそのまま眠っていれば良かったんだよ。ずっと、ずっと。 その言葉に悪意はない。心の底からそう思っている声音で、シャルディアは呟く。その声はいっそ労りを含んでいた。 「……裏切られた時から解っていた事だろう?」 神は必ずしも全能ではない。死神と比べると、それは顕著に表れる。神としての志向が全く違うから、比べるという行為自体、愚かなのかもしれないが。 シャルディアは椅子から立ち上がり、橙色の瞳のそれに近付き、微笑う。 「まだ、お眠りよ。――――私は、あれらに協力するつもりは無いけれど、手を出す気もまた、無いんだ。」 ぐにゃりと空間が歪み、異物を排斥しようと蠢く。この空間はシャルディアが創り出したこの空間は彼の意のままに。 「―――――おやすみ。」 拒む様に、嫌がる様に伸ばされた白い手を、取る事なく、シャルディアはそう囁いた。その声は酷く優く響く。
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