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「初めまして、私はアルヴァイア。このギルドのマスターを務めているよ。――――あぁ、頼むから、そんなに怯えないでくれないか。」
困った様に微笑うアルヴァイアには申し訳ないが、人間は怖いのだ。視線を合わせる様にして膝を折ってくれているのだが、怖いものは怖い。
ネイトの後ろに隠れ、小さく頭を下げる。
そうすると、アルヴァイアは優しく微笑んでくれた。
「この街でなければ、宿に預けて来るのですけどね。」
「あぁ、ここの界隈は治安が悪いからね。小さな子を連れて歩くのは、お勧めしない。」
見るからに高級な革張りのソファに向かい合わせで座ったネイトとアルヴァイアはそんな会話を繰り広げていた。
ネイトは余り僕を、連れては行かない。僕にとっても、珍しい事だった。だからこそ不思議に思っていたのだが、そういう理由が有った事を知り、迷惑を掛けているという事実に、肩を落とす。
―――――人は怖いし、独りも恐ろしくは有るけれど、それでもやはり迷惑を掛けたくは無いのだ。ネイトには。彼には返せない程の、恩がある。
「それにしても、何故フードを被っているんだい? 」
――――見られたくないものでもあるのかな?
純粋な疑問からだろう。問い掛けられたその声に、びくりと身を震わせる。
室内でフードを被り続けているのも可笑しな話だ。その疑問を持つのも当然なのだろう。
「あぁ、私は別に隠さなくていい、と言ったのですが。……シキ、彼女は差別をする様な人間では有りません。」
――――恐れなくて、大丈夫。そんな言葉に首を振る。ネイトの言葉を信じていない訳ではない。……けれど、気持ち悪いと、気味が悪いと、言われるのはもう嫌で。
拒絶されて、傷つくのも、もう。
「……シキ、という名前なんだね。―――無理をして、見せようとしなくていい。隠したいものを、無理矢理見ようと思う程、私は悪趣味ではないさ。」
でも、私を信頼できると思ったら、見せてくれると嬉しいよ、と、アルヴァイアは微笑う。
その優しさを申し訳無く思いながら、甘えさせて貰う事にした。
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