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シキ、という少年は酷く人に怯えているらしかった。旧知の仲であるネイトに連れられた彼は、随分とネイトに変化を齎してくれたらしい。 ―――――あんな優しい目をして、誰かを見るネイトは、見たことが無かった。心を許した様な、柔らかな笑みすら、久しく見た事は無かった。 だから、どう、と言うわけではないけれど。 ただ、まさかネイトが子を拾い、あまつさえ育てるなど思いもかけなかった。と言うだけの話だ。 ネイトがこの街に留まり、情報収集をする昼の間、アルヴァイアのギルドで預かる事になった。本来なら連れて回るべきなのだろう。……が、しかし、この辺りは治安が悪い。この小さな子供を連れるには余りにも危険だ。 だからこそ、此処に預けるという選択を取ったのだろう。 「……何か、食べるかい?」 「……。」 ふるふると首を振る幼子に、アルヴァイアはどうしようか、と頭を悩ませた。 別に子供は嫌いではないが、好きでもない。やかましく無ければなお良い、とだけ思っていたのだ。 所がこのシキという子供は、嫌に静かで、今も部屋のソファの端に座り、彼の様な年の頃の子供が読まないであろう本。 決して騒がないし、礼儀正しい。ネイトが拾い、いまだに連れている訳だ、とアルヴァイアは妙に納得した。 「……本が好き?」 目の前にしゃがみ込み、小さな幼子に笑いかけると、びくりと肩を震わせて此方を見る。 ――――取って食うつもりは無いのだけれど。 そうアルヴァイアは微苦笑を浮かべ、思う。 こくん、と頷くのを見て、ならば、と部屋にある本棚を指差し。 「此処にいる間は、好きに読んで貰って良いよ。」 ――――読めるのなら、と微笑した。
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