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ぱらぱらと、静かに本のページが捲られる。本を捲る手は淀みない。 【魔法基礎論】と銘打たれたそれは、推定五、六歳の子供が読む様なものではない。 アルヴァイアはネイトから預かったシキという子供に、戸惑いを覚えていた。……と同時にネイトはどういう教育を施しているのだろうか、という疑問が浮かんで、消える。 ネイトは数年前と生活スタイルが変化していない様で、相変わらず一つの街に留まらず、様々な街を点々としているらしい。そんな彼と行動を共にしているシキは、当然そういった教育機関に在籍出来る訳も無い。 そうすると消去法で、ネイトが教えている、ということになるのだが……。 ――――――あの、ネイトが人に教える? アルヴァイアにはその想像が、不可能だった。 ネイトは確かに、天才と呼ぶべき人間だ。しかし、その人間性には、大きな欠落がある。人に教える、なんて以ての外。元より、人に興味が無く、無関心であったのが、 ネイトの常。 そんなネイトにどんな心理的変化を齎したのか、アルヴァイアには推し量る事は出来ない。 しかし、少なくとも――――。 「…………。」 この幼子が、その鍵である事は確かだ、と、アルヴァイアはソファに座るシキを横目で捉えながら思考する。 他者を気にかけ、護ろうとする姿は、自身が知るネイトには無かったものだ。 ――――何事にも無関心で、殆どの執着心を持たぬ様に、彼は生きていた。その中でただ一つ、ずっと探している、何か。 その何か、を、ネイトは語る事は無かったが、十中八九良くないものであるという予測は出来た。 「……?」 思考を巡らせる内に、シキの方向を凝視してしまっていたらしい。当惑の表情を浮かべて、此方を見ている。まぁ、表情、と言っても、あくまで雰囲気。小さく小首を傾げ、此方に顔を向けているから、そう判断したのだが、もしかすると違うのかもしれないが、彼は返事をしないし、推測するしかない。 礼儀が成っていない訳ではなく、寧ろ彼は礼儀正しい子供と言えるのだろう。しかしこうも喋ってくれないと、コミュニケーションを上手く取れない。 アルヴァイアは、ひとまず小さな彼に向かって、何でもないよ、と笑いかけた
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