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面倒な、とアルヴァイアは呟いた。 執務机の上に目の前の景色が全く見えない位、嫌がらせの如く積まれた書類の山から、どうにか逃避出来ないものか、と半ば諦観の気持ちを抱きながら、それでもペンを動かす手は止まらない。 ――――どうして、こうなったのか。 そんな言葉がぐるぐると頭の中を巡り、はぁ、と溜息を吐き出した。本来なら、今日はそう処理すべき書類は数える程で、何より、アルヴァイアは仕事を溜めるタイプではなく、さっさと終わらせてしまうのが常である。 そんな彼女が何故、この様な事態に陥ってしまったのかと言えば、それは数時間前に遡る。 今朝、アルヴァイアがギルドマスター専用の執務室に入った時、暑すぎず寒すぎず、日射しは丁度良い具合に部屋に射していた。実に過ごしやすい天気に、少しだけ気分が浮上したのを感じながら、通常通り、ギルドを開ける準備をし始める。 そろそろギルドに泊まった連中も目を覚ます頃だろうと、思いながら、スケジュールを確認。いつも毎日大量に送られてくる依頼やその他諸々を確認し、今日は数える程の書類で助かった、とアルヴァイアは安堵した。 依頼はこの国ばかりではなく、他国からも山の様に依頼が来る。どの街にもギルドは一つくらい有るものだが、それでも手が回らない程、大量で、ギルドというのは激務そのもの。 一日に届く依頼の数は、一日では到底捌ききれないし、実力に見合わない事も多々ある。 それなのに今日のように、依頼の数が少ないのは稀な事で、年に二回もないだろうという、半ば奇跡に近いものだった。
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