最強の姫に

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実戦することになったナギサとカズエラの周りに、多くの野次馬が集まった。 先日帰って来たばかりの姫と、聖界一の剣術士との対戦なのだ。 一方、サーラはその様子を見ながらも、軍のトップとトップ2に囲まれていた。 「全く。ここまでちゃんと予想してほしかった」 彼、軍の最高責任者であるセイズは、サーラを咎めた。軍トップ2のキレアも、彼の後ろに佇んでいた。 新人に邪魔になるからと、軍人なら誰でも使える実戦場に連れて来られた。広い実戦場の上には、ナギサとカズエラしか立っていない。 だが、周りは多くの軍人に囲まれていた。位の高い軍人から、新人まで様々だった。 「あの、師匠……。これじゃあ集中出来ないんですが……」 練習用の木刀を持ったナギサが呟いた。 「実戦だったら、もっと騒がしいこともあるさ」 「そ、そうですけど!私、帰って来たばかりで、ちゃんと出来るかわからないんですよ!?」 「問答無用、だよ」 そう言うと、カズエラは容赦なくナギサに向かって来た。ナギサは慌てたが、腹を括ったらしく、しかと木刀を握り締める。 「帰って来て早々、ここまで出来るなんてさすがじゃないか」 カズエラはそう言って、微笑んだ。ナギサはわけがわからないような表情で立っていた。既に木刀は手から落ちていた。 「これでまた修行を積めば、もっと強くなる。……期待してるよ」 カズエラはそう言いながら、ナギサに手を伸ばした。その手をナギサはぎゅっと握り、カズエラは満面の笑みで答えた。 「ね?いい見学だったでしょ?」 サーラはナギサとカズエラの戦いを見た後、すぐにセイズに振り返った。 「……サーラ、後で俺の部屋に来い。総指揮官命令だ」 そう言って立ち去るセイズの言葉に、サーラは固まった。それを見ていたキレアは、サーラの肩をぽんっと叩いた。 「ここの後始末は私がやります。メイル副隊官は総指揮官の元へ行って下さい」 キレアの最大限の心配りなのだろうが、サーラは顔面蒼白になりながら、セイズの元へ向かった。 後に、サーラとカズエラは、聖界防衛軍の総指揮官殿に説教を食らうことになる。 一方のナギサはと言えば、再び師匠であるカズエラの下で修行をすることを心に誓った。 ナギサが生まれ持った才能を開花させるのは、もう少し後の話。 そして、それゆえに、「戦姫」と呼ばれるのはもっと後の話。
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