前作の結末に総統閣下はお怒りのようです

2/4
前へ
/45ページ
次へ
唐突だが、鵺(ヌエ)という生き物をご存知だろうか。 地方によって細部は異なるが、体は獅子で顔は猿、尻尾は蛇で背中には鷹の翼が生えている、というのが一般的だろうか。 まるで何処かの錬金術アニメに出てきそうな容姿をしたそんな生き物が鵺と呼ばれていたりする。 さて、ここで重要となるのがどこにでもいる極々平凡な高校三年生であるはずの俺が何故何の前触れもなくそんな事を言い出したのかということだが。 答えは簡潔でそれが目の前にいるからなのである。 何を言っているのかわからないと思うので、もう一度言う。 目の前にいるからなのである。 その『空想上の生き物』であるはずの、鵺が。 「ほう、生で見るのは初めてだな・・・・・」 人間、命の危機に立たされた時には冷静になるという通説は本当のようだ。 現に今の俺は過去に類を見ないくらいに落ち着き払っている。 目の前にいる化け物を鵺と認識した上でその説明まで始めてしまうのだから、これを落ち着いていると言わずしてなんと言おうか。 訳のわからない事を口走っている気もするが、それはきっとゴルゴムの仕業だろう。 断じて俺の気の迷いから来る発言ではないということを言い添えておく。 「大丈夫、慌てない慌てない。こういう時の為にコイツがあるんだから」 冷静に、あくまでクールに。 こちらを威嚇するように大口を開けて絶えず生臭いニオイを香らせている鵺からは視線を外さず、俺は尻ポケットを弄る。 俺がそこから取り出したのは、こんなこともあろうかと五年前のブームの時に購入しておいた化け物撃退グッズ。 お手ごろな物から目玉が飛び出すお値段の物まで存在する今や生活の必需品となったこの撃退グッズだが、こいつは百均のワゴンセールで叩き売りされていたという超クールなイケメン御用達のお洒落アイテムだ。 形状はナイフ、選んだ理由は強くなれる気がしたから。 決して実用を考えて購入したモノではないので武器としては少々心許無い気もするが、持っているだけでそれなりに安心感はある。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加