[五頭目]人形

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楽団の音色が胸をときめかし、様々なパフォーマーに人々が群れる中。まばらにしか集客のない一角がありました。 私めは幼くて貧弱なチビでしたから、人気の演目など人垣の果てからでは観れずに。そちらの空いている場所に進んだのです。 大柄な男が背を丸めて椅子に座り、人形を膝に乗せて腹話術を披露しておりました。 人形は一メートル以上ありましたかね。当時の私めを、ひと回り縮めた位で。 男の体躯が立派でしたので、木偶人形はますます小柄に、ひどく滑稽に映り。しばらく見入っておりました。 カラカラ カラカラ 男が話す度に人形の右腕が揺れ、物悲しく乾いた音色を立てます。妙に耳に残っております。
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