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「一人で来たのかい。」
頭上から降ってきた野太い声に、私めは飛び上がりました。話しかけてきたのは腹話術の男です。
人形を二つに折って巨大なカバンにすっぽり収め、ニヤニヤ笑いかけてくる男に怖気立ち。慌てて走り去りました。
子供……私めと歳もそう変わらない小柄な……手足は間違いなく木製……でも顔は……?
自分も人形にされていまいそうで、しばらく人の多い場所から遠ざかって過ごしました。
人形の正体は、誘拐でもされた四肢の無い子供だったのか。それともアレも、腹話術師の術だったのか。
今は昔。真実を知る術はありません。
祭りで灯されるカラフルなランプを眺めていますと、懐かしくも恐ろしい気持ちが甦ります。
ーー買ったこの人形は、近所に住む子供にでもやりましょう。
私めの思い出話のオマケ付きで、ね。
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