[一頭目]紅い蝶

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この辺りは一年を通して涼しい気候が特徴ですが、夏はさすがに、幾らか暑うございます。 ふうふう汗をかきつつ、森を歩きますとね。 白い蝶が周りに集まってくるのです。 手の平よりも大きな蝶。一頭、二頭と、見る見るうちに数は増えていきます。 木漏れ日を反射し白銀に羽ばたく大きな蝶々は、それはそれは美しいモノなのですが。 まとわりつく蝶を、そのままにしておくと。歩けないほどに身体が、だるくなって参ります。 そして次第に、白い蝶は紅い蝶の群れに変化してゆきます。 痛みなどは一切、感じませんが……蝶に体液を吸われているのです。特に血液が、蝶の好物でございます。 人の汗や涙、血の匂いを嗅ぎつけて集まってくる死出の蝶。純白から鮮やかな真紅へ変化する蝶。 ここいらの夏の風物詩といえましょう。
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