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菊池真。
この事務所の誇る凛々しい王子様。
しかし、この愛称には問題が一つある。
他はなんの問題もなく認めてくれているのだが、肝心の自が一向にその事実が認めないのだ。
「事実は常に受け入れ難いものだぞ」
なんてプロデューサーの言葉に納得するような女々し……もとい柔な性格はしておらず、真は毎日のように乙女となるように努力している。
乙女となる為の努力をしている時点で何か違うが、そんなことに気付くような奴は元から的外れな努力をしない。
「はあ……」
そんな真も溜め息を吐く姿は年頃の乙女のようだ。
まるで一枚の絵画のような光景を話しかけることで見出してしまうことは無粋なような気がしてくる。
実際、これが真ではなく他のアイドルだったらプロデューサーは少しの間放置していたことだろう。
「悩みごとか?」
「あっ、プロデューサー……。あの、プロデューサーに聞きたいことがあるんです……」
「話してみろ」
「プロデューサー……いつになったら僕に可愛い服を着る仕事がくるんでしょうか?」
真が乙女チックに何かを考えている時、それは大体ロクでもないことを考えているのだ。
「真」
「はい」
「バライティ番組の仕事の依頼はないぞ」
「どういう意味ですか!?」
「お前が可愛い服とか完全に罰ゲームだろ」
正しくは『真が可愛いと思う服』を真が着ることが罰ゲームなのだ。
もっと言えば『真が可愛いと思う服』を着るのは誰にとっても罰ゲーム。
見た目は文句なしで整っている為、一般常識の範疇に収まる服を着れば……しかし、それができないからこその乙女(笑)。
「うぅぅ……プロデューサーの言葉と思えません……」
本人の為の言葉とは常に耳障りなものだ。
「ふぅ……解ったよ真」
しかし、アイドルのヤル気をそぐだけではプロデューサー失格。
アフターケアも忘れない。
「えっ? もしかして……」
「ああ、着せてやろう」
「プロデューサー!」
「丁度『女装男子の地位を高める会』から……」
「断って下さい」
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