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1-1-A
頭がぼぅっとする。
横に居る男は、俺の肌に手を伸ばした。
この男の肌は、いつも暖かい。
少し黒い健康的な肌かと思えば、あまり鍛えた様子でない身体。
触れられることに抵抗は、無かった。
寧ろ触れられる事で、もどかしい思いを消してもらえた気がした。
あの人になら、何をされても構わないっと思った。
「秋良っ!」
四肢に走る激痛は、雷の如く駆け巡った。
俺は、意識が無くなるまで、痛みに耐えながら名前を叫んだ。
だが彼が、俺の名前を読んでくれる事はなかった。
冷たい床に這いつくばって、彼を見上げる。
彼は、いつもこうやって武器を試すのだ。
俺を使って…。
ソレでも彼から離れられないのは、ここにしか居場所がないから。
なんだと思う。
激しい痛みは、朝方まで続いた。
動く気力が無く朝日に照らされて、流れ出る血を見詰めた。
あの人が出ていった扉から、誰かが入ってくる。
しゃらんしゃらん
俺の首についてる者と同じ鈴の音。
ソイツは、俺を見下ろして無言で頬を蹴飛ばした。
「くっ」
たしかコイツは、“雛菊”っと呼ばれていた気がする。
直接あったことは、ないがあの人から聞いた。
━━新しい愛玩動物を捕まえたんだ
沢山居る彼の愛玩動物で、雛菊だけはあったのは初めてだ。
雛菊が来てから隔離されてしまった。
犬や猫の様に鎖に繋がれ、檻に入ったから。
雛菊は、暫く俺を殴った後人形の様に転がった俺を睨み付けた。
そしてあの扉が開く。
「雛菊なにをしている?」
先程まで、俺を殴っていた雛菊は青ざめて恐る恐る扉をみた。
ズカーン
目の前で赤黒いものが噴き出して、雛菊は床に転がった。
彼は、銃にセフティーをかけて俺の前にしゃがむ。
銃をぶっぱなしたのは、あの人だった。
動かなくなった雛菊に触れて、ほくそ笑んだ。
「躾のし直しが必要だな」
常人であればゾッとするだろう。
出血が酷いのか―…だんだんと視界が霞む…。
自棄にあの人の声は、ゆっくり聞こえて逆に聞きにくい。
ヤバいっと思った直後、暖かい何かが頬に触れた。
唇にふわふわしたものがあたった。
そして遂に意識を、手放した。
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