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薄暗い、ボクシングのリングをイメージしたかのような小さな闘技場は、静寂に包まれている。
二階には、校長や教頭をはじめとした教員達、そして、政府の上役の人間が三人、自分たちの登場を待っている。
青年…巽翔は、深呼吸をし、黒光りする戦闘服の留め具を留めた。暗闇の中で、戦闘服に紅いラインが浮かび上がる。血の流れに似たラインは全身に行き渡り、一層輝きを増した。
翔は、少し長めの茶髪を束ね、ヘルメットを装着した。ヘルメットにも紅いラインが現れ、暗闇に映える。
「行こう。」
暗い闘技場に光が差し、翔が闘技場に足を踏み入れる。覚悟は出来ている。体調も万全だ。プレッシャーに負ける事はあり得ないだろう。
すると、向かい側にある薄暗い入り口から、自分と同じ黒い戦闘服を着た者が出てきた。ヘルメットを着用しているので、顔はわからない。
ただ、自分より小柄な体格で、胸やくびれがあるという身体的特徴から、女性である事は間違いなかった。
全身に映える緑色のラインが、彼女の性格を表しているかのようだ。
「お互い、頑張りましょう。」
「君が相手か。なら、全力で応えよう。それが礼儀…そして互いの現時点での目標だ。」
紅と緑は、それだけ会話を交わすと、互いに一定の距離を保って身構える。
「はじめ!!」
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