事実

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「何か忘れ物したんですか?」 先生にたずねられた。 「家の鍵をロッカーに落としてたんです。」 「そうなんですか。でも置いていっても家には保護者の方が…」 「いないんです。」 「え?」 「私…今一人なんです…母は家を出てしまいました。血の繋がらない父と兄がいましたが、兄は私の小さい頃に出て行き、父も私が知らない間に死んでました。」 「そうなんですか…」 私は涙が出そうなのをこらえた。 こんなとこで泣いたら泣き虫って思われちゃうから。 「そっ…それに、家を出て行った母から今朝手紙が来ていきなりあなたにはお兄ちゃんがいるから探してくださいって…もう私なんて家族誰一人いないんです…」 「………………。」 しばらく沈黙が続いた。 先生はちょっと困った顔をした。 「咲…会いたかった」
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