事実【春 Side】

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「何を忘れ物したんですか?」 初日に忘れ物とかきっと相当なものなんだろう。 佐藤さんはロッカーをごそごそと探した。 「家の鍵をロッカーに落としてたんです。」 そういい、佐藤さんは俺に見つけた鍵を見せた。 でも、鍵くらいなら親御さんが・・・? 「そうなんですか。でも置いていっても家には保護者の方が…」 佐藤さんは困った笑顔をした。 その笑顔はとても "悲しそう" な笑顔だった。 「いないんです。」 「え?」 いない? そんなはずは・・・。 「私…今一人なんです…母は家を出てしまいました。血の繋がらない父と兄がいましたが、兄は私の小さい頃に出て行き、父も私が知らない間に死んでました。」 いきなり10年前のことを思い出した。 もしかして・・・佐藤さん、いや、佐藤咲は10年前に別れた義理の"妹"なのかもしれない。 「・・・・・・。」 ただ、本当かわからない。 沈黙が続く。 佐藤さんはおろおろしていた。 俺はこの子を信じよう。 「咲・・・会いたかった。」
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