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霞がかったように辺り一面何も見えない。
「ここは…」
何もわからないまま歩いていくと、そこには満開の桜並木と見覚えのある男の背中。
「よう待ってたぜ」
振り返った男はあのころとまったく変わらない。
「グラララ。お前が俺を待ってただと?」
「あぁそうさ。息子が世話になったからな」
男はそう言って杯を掲げる。
仕方なく座ると用意のいいことに杯はもう一つ用意され、そこには並々と酒が注がれている。
「…あいつはお前のことを恨んでたぞ」
「ハッハッハ。知ってるさ。見てたからな。当たり前だ。俺はあいつに何もしてやれなかった」
男は悲しさなど微塵も見せず笑っている。
「だが親代わりわお前とガープがやってくれた」
嬉しそうに目を細めて笑う男に呆れてしまう。
「グララ。ガープのやつもとんだお人好しだ。敵だった男の子供を育てるなんてな」
「それはお前もだろう。なぁ白ひげ」
「グラララ。エースはもう俺の子だ」
「あぁ…ありがとよ」
男の声は今まで聞いた中で一番真剣だった。
「さて」
「なんだ?もう行くのか?」
腰をあげた男は笑ったまま俺が今来たほうを見ている。
「もうすぐエースがくる。お前一緒にのんでやってくれ」
「…会わなくていいのか?」
「フッ…今更どんな顔して会えって?それにな…」
男がゆっくり後ろを向くとキレイな女が立っていた。
女は丁寧にお辞儀をするとスタスタと歩いていってしまう。
「おれにはあいつがいる。エースにはお前がいてやってくれ」
かつて海の王と呼ばれた男は一度も振り返らずに歩き去った。
「オヤジー」
遠くから走り寄ってくる声がする。
海賊王が最も欲しかったのはお前だと言ったらあいつはどんな顔をするだろうか。
まぁそれでもエースはおれの子だ。
あいつが奪ってでもというなら地獄でまたあいつと一戦やるのもいいだろう。
なぁロジャーよ。
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