そして彼は絶望を手にした

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電車から降りて、俺の働くパチンコ屋までは駅から直進 200m つまり、うっすらと影が見えるわけだ 俺の大好きな先輩のいる大好きな職場が この辺りでいつも胸がざわつき吐き気を催す ストレスというなのボディーブローが俺のみぞおちにクリティカルヒットだ 自らの足で自らを処刑台へと進ませながら、その真っ直ぐな道を歩く 「見つけた」 「え?」 うつむき歩く俺に声をかけてくる男がいた 「やっと見つけました。あなたしかいない」 なんだこいつ…和服なんか着やがって。宗教勧誘か?俺が不幸そうに見えるからってカモる気か? ナメんなよ。生憎俺はんなもんにすがるほど甘くねえよ。ていうか世の中が甘くないのか 「あなた、今の自分が嫌いですね」 「いえ大好きです」 「あなたからは強い波動を感じる」 「いえ気のせいです」 「どうですか?あなた…力が欲しくないですか?」 「?!」 この詐欺ヤロー、死んだ魚みたいな目しながら堂々と朝っぱらから人を騙そうとしやがって…なんて奴だ だけど…何でだ こいつの眼 嘘を言ってるふうには見えない。まさか本気でこんなこと言ってんのか 確実にあれだな。ヤク漬けってやつだな 関わったらヤバイな。シカトしよう スッ ビクッ! 男はいきなり手を差し出してきた ビビっただろうがボケ!刺されるかと思ったわ! 「信じる必要はありません。ただこれを使えば、あなたは抜け出せる」 「日常から」 その言葉は…俺が ずっとずっと欲しかった言葉だった こんなヤク漬けヤローに言ってもらいたかったわけじゃないんだが それでも… 俺は、男の手に乗っている小さな黒い球を…そっと手に取った
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