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「さて、今日の依頼もペット捜索……か」
カップをテーブルの上に置き、何やら多くの書類が挟まれたファイルを手に取りペラペラとページをめくっていく。
「先週の土曜日も先々週もペット捜索……先月も……いやこれはダルメシアンで捕まえるのはなかなか大変だったな。 まぁ、私にかかればどんな事件もいとも簡単に……」
口元を緩めて依頼内容の書かれたページをめくり続けるが、出てくる文字は迷子捜索、ペット捜索、家の鍵の捜索のみ。
「探偵事務所を設立して早一年、未だに名推理を見せられるような事件はない……いったい何故なんだ……?」
片目を瞑り小さく息を吐くと、急にハッとした顔をして立ち上がるとデスクへと向かいイスに座って爽やかな笑みを見せた。
「分かった……分かったぞ!! 私には助手がいないからだ。 何故そんな簡単なことに気がつかなかったんだ」
藤堂は訳の分からない事を口走り、何処から取り出したのか分からないが、白い画用紙をデスクに叩きつけるように置き、凄まじいスピードで何やら書き込んでいく。
「出来た……さすが私だと言うべきか。 未経験の事でもここまで簡単に出来るとは」
ふむふむ、と何度も頷き【来たれ助手!!】とでかでかと書かれた紙を持ち上げ、早歩きで玄関の方へと向かい、扉を開けて入口のすぐ隣の赤煉瓦の壁に貼り付けると鼻歌を歌いながら上機嫌な様子で部屋に戻りソファに腰掛け、テレビの電源を入れた。
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