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次長の目を気にしないで グラスを口に運ぶが、手が震えて マティーニが少しこぼれた。 普段のように 出来ない自分が 情けなかった。 なんとか とりみださないで、店を出ることに 成功し、次長と 駅に向かって歩きだした。 次長はというと、酔いが回ってきたのか、赤い顔をしては、しきりに 頭を掻いていた。 その様子は いかにも年下然としていて 自分の年齢を思いしらされていた。 「今日は、カッコ悪いとこばかり、見せちゃったね。お疲れ様でした。」 軽くおじぎした。 次長は 目をしばたくと、 「そんなことないですから。一生懸命で…」 「素敵です!」 そう言うと 振り切るように、改札口に走って行った。 次長の背中を 見ながら、ちょっと嬉しくなった。 風邪のせいで 恋が見付かりそうだ。 改札口を通り抜けると、気分が 変わっていた。 新しくなった感じ。
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