星の砂

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.  これは奇跡だったのだろうか……。  私は今、義父とお婆ちゃんの葬儀に参列していた。  そう、悪魔親子の儀式。  悲しみの涙など出る筈もない。  あの日、車で出掛けた悪魔親子は山間の崖から転落事故を起こして即死。  遺体は二人とも転落した衝撃で胴体から真っ二つに切断され、お互いの下半身はまだ見つかっていなかった。  死んでも尚、この悪魔親子の下半身はお互いを求め合い、探し合っているのだろうか……、不意に吐き気が押し寄せてくる。  咄嗟にハンカチで口を押さえて、咳き込んだ。  ふと葬儀場の入り口に視線を感じた私は顔を上げて感じる視線の先に目を移した。  そこには、生きる死神と名乗った怪しい男が、切断された上半身のない、下半身だけの二体の身体を肩に抱えて立っていた。  私と視線が合うと、深々とお辞儀をして、姿を消した。  これが奇跡だと言うのならそれまでだけど、私を待っていた運び屋の死神は本当に自殺者の魂を運ぶ事が面倒だったんだろうか?  本当は死神などではなく、希望を運ぶ使者だったようにさえ思えてくる。  この世で悪魔は生きることは出来ないのだと、警鐘を鳴らしているかのようだった。      ……、そう思った。          【完】 .
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