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「大丈夫ならいいんだけど、倒れて頭でも打ったら大変だぞ?」
「すみません。ありがとうございます」
「病院まで送ろうか?」
「いぇ、大丈夫ですから」
私はその男の人に頭を下げてから学校へとふらふら歩き始めた。
初夏の陽射しは相変わらず私の身体を叩きつけてくる。
光など必要ない。
太陽なんて昇る必要などないんだよ。
皆、闇の中でひそひそと生きればいいんだ。
生きる資格を失った以上、太陽なんて私には不必要だった。
学校の正門が遠くに見えてきたとき、私は歩く力を無くして標識のポールに背中を預けて座り込んだ。
「……、冷たくて気持ちいい」
標識の鉄製の白いポールのひんやりとした冷たさを背中で感じていた。
遠くに見える学校へ行くことも今の私には無意味だと、ボーっとする視界に呟いた。
「間に合った」
「えっ?」
「待っていたんだよ」
座り込んだ私の背中で声がした。
振り返えると、そこには黒いスーツに黒いサングラス、そして黒い帽子を深く被った見るからに怪しい男が立っていた。
「見えますよ」
「何がですか?」
「君の背中に悪魔が見えますよ」
「えっ?」
気味が悪い男が言った悪魔と言う言葉に私の頭の中で義父とお婆ちゃんが重なった。
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