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「どういう意味ですか?」
私は標識のポールを掴みながらその場に立ち上がった。
「悪魔に犯されてますよね?」
「……」
「しかも一度や二度ではない。その悪魔の母親に覗かれ、悪魔親子の性の道具になってる」
「……、何故そんなことまで知ってるんですか?」
「ふふ、それはどうでもいい。消したいかい?」
「えっ、何を?」
「選択は二つに一つ、君の記憶から過去を消すか、悪魔自身をこの世から消すか」
「……、あなたはいったい」
「ふふふ、私は生きる死神です」
「生きる死神?」
「はい、生きる死神。明日君の所へ本物の死神が行く、別に私が偽者ではないんだが、担当が違ってね。要するに死神が君の所へ行くという事は、君は明日死ぬということ」
「……、それでも構いません」
「まぁ良いんだけどさ、自殺は面倒なんだよね、後始末がさ」
「後始末?」
「あぁ、なんせ遠いんだよ、自殺者の魂を持って行く場所がさ、運ぶのは私の仕事だから、一年もかかるから、面倒なんだよ」
「私は明日自殺するの?」
「あぁ、明日の朝、悪魔達の前で灯油をかぶって焼身自殺する」
「……、死んだ方が楽なんだよ」
「いやいや、一年かけて運ぶのは避けたい。往復二年なんだぜ?」
そう言いながら不気味に笑う男はスーツの内ポケットに手を入れると、中から小さな硝子瓶を二つ取り出した。
「青のラインが入っている方は過去の記憶を消す瓶で、赤がこの世から消せる瓶」
その二つの硝子瓶は男の手のひらの上で、コロンと転がった。
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