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君は赤信号の道路に突っこんでいった。
そして通ったトラックが、
「あぁあ゙あ゙ぁ゙あ゙あ゙!」
君を轢いた。
君の血飛沫の色と君の香りが混ざり合ってむせ返った。
急ブレーキの音が、まるでトラックの嘶きのように聞こえた。
(……なんで)
君はトラックに気づいた瞬間、全身の力を抜き、生きることをあきらめたように目を伏せた。
どうして───。
(……嘘だ………)
それを否定するように、頭のなかで誰かが僕を嘲笑っていた。
「嘘じゃないぞ」、と。
脳裏に浮かんだのは陽炎の姿で、そいつは何が面白いのか、とても愉快そうに嗤っていた。
嗤い声と蝉の音が頭を埋めつくし、僕の思考を停止させる。
視界が眩んだ。
(あれ、猫、どこにいっ、た……)
───…
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