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なんで。
なんでだよ。
何度も世界が眩んだ。
何度も君が死んだ。
君が死ぬ直前まで、僕は君が死ぬ夢の内容を思い出せない。
君の潰れたような悲鳴も僕の嗚咽も、陽炎が嗤って奪い去る。
何十年繰り返した?
何千回君が死ぬのを見た?
もう、とっくに気がついていたろ?
どうがんばっても何をしても、君は助からない。
君が助かる結末はきっとひとつだけ。
繰り返した夏の日の向こう───。
公園で僕は君とふたりで駄弁っていた。
君が道路に飛びこもうとして───僕はすべてを思い出し、君を押しのけ、代わりに飛びこんだ。
「あ、っああ゙あ゙あ゙あ゙!」
僕はトラックにぶち当たり、軋むからだから大量の血が飛び散る。
血飛沫の色が、君の瞳に乱反射した。
陽炎は文句ありげにこちらを見ていた。
いつもの頭がおかしくなりそうな嗤い声は聞こえなかった。
陽炎の、燃えるように真っ赤な目を見て、「ざまぁみろよ」と笑ってやった。
今日ここで、君が死に続ける夏の日が終わった。
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