想像フォレスト

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本を読んでいた。 私は本が好きだった。 家にはたくさんの本があった。 100年以上もかけていままで読み続けてきた。 それでも、家にはまだありあまるほどの本がある。 この蔵書たちは誰がそろえたのだろうか? 疑問に思うことはあったが、いまとなってはたしかめる術はない。 本の力は偉大だ。 私にいろんな世界を見せてくれる。 魔法を使ったり、王子さまと結婚したり、そこには夢のようなきらきらと光輝く世界があった。 ───かすかな風が頬をなでた。 今日はいい天気だ。 日光浴をしながらお茶を飲むのもいいかもしれない。 窓を開けて、自然の空気を肺いっぱいに吸いこんだ。 木漏れ日が心地よい。 ちちち、とわずかに鳥の声が聞こえた。 迷いこんだのだろうか。 森の奥にあるこの家に、小動物が寄りつくことは少なかった。 読みかけの本を置いて、右手首にりぼんのように巻きつけた包帯を目に巻いた。 小鳥かな? 「どこから来たんだい」 なんだか嬉しくなって、笑いかけた。 目隠しをしたままの、そんな、午後三時。
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