ヘッドフォンアクター

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───ヒトの瞳って、黒いよね。 「ん?」 はて、そんな知識はどこで仕入れたのだろうか。 私は充電の切れたケータイの黒い画面を見ていた。 画面に映る私の瞳は、燃えるような赤色。 この赤は私に限らず全人類に共通するものだ。 私も、両親も、友達も、学校の先生だって、瞳はみんな赤い。 なぜ瞳は黒色だと思ったのだろう? まあ、そこまで気にすることはないか。 テレビやマンガの見すぎかもしれない。 なにがなんでもその理由をつきとめたいわけではない。 「………」 あーあ……充電が終わるまで暇だなあ。 いっそのこと勉強でもしてみようか。 参考書を机に広げてみた。 「………」 いまここで勉強するぐらいならどんなに退屈でも寝ていたい。 かも。 「はあー……」 ため息ひとつ。 ぐっと伸びをすると、中学の技術の時間に作ったラジオが目についた。 なんだか懐かしい。 卒業アルバムを広げるように、ラジオをつけてみた。 だが、流れるのは面白味の欠片もないニュースばかりだった。
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