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「あの丘を越えたら20秒でその意味を嫌でも知ることになるよ。疑わないで。耳を澄ませたら20秒先へ」
走る、走る。
ひたすら走る。
わけもわからず脇目もふらず。
ただ、私の本能は告げている。
この声に従わなければ死ぬと。
大通りに出た。
みんなパニック状態だった。
交差点は当然大渋滞。
もう老若男女は関係なく、怒号やら赤ん坊の泣き声で埋まっていた。
暴れだす人がいた。
不安にかられた人間は暴力に訴える。
汗で額を濡らしていた。
泣き出す少女がいた。
ひとりで心細いのだろうか。
道のまんなかでぽつんと、誰かを待っているように見えた。
祈りだした神父がいた。
神よ、と呟いている。
そういえばなぜ地球が終わるのか理由を知らなかった。
本当に神の仕業なのかもしれない。
だが、神父が祈ったところでどうにもならないだろうな、とは思った。
みんなみんなを追い抜いて、ただ一人、私が目指すのは逆方向のあの丘の向こう。
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